2023.06.29 06:40ミス・コンの文化人類学 文化人類学の目・・世界一の美人など決められるはずがない 江戸川大学オープンカレッジで講演 ウーマンリブ全盛期に女性の商品化などと批判されて下火になったミス・コンは、近年再び盛んになり、アフリカ系女性が選ばれて話題になったりしているが、文化人類学の目で見れば、女性の商品化批判以前に、そもそも世界一美しい女性を決めるなどということはできるはずがないのだ。 まずミス・コンは不道徳などとして認めない民族もおり、決して世界普遍の文化ではない。 また、順位をつけるためには、ものさしは一つでなければならないが、世界一の美人を選ぶミス・コンでは、白人や白人風の女性が多く選ばれてきていることからわかるように、特定のものさしで世界の多様な人種の女性たちを順位付けしてきている。 さらには、眉毛がつながっているのが美しい、太っているほど美しい、首が長いほど美しい...
2023.06.27 10:37東西逆転!大阪なのにエスカレーターの左に立つ駅*通路の構造が乗り方を変えた住之江公園駅 大阪なのにエスカレーターで左に立つというのは、大阪メトロ四つ橋線と南港ポートタウン線(ニュートラム)の乗換駅住之江公園駅。 この駅にはエスカレーターが4基あり、3基は大阪式に右に立っているのだが、地下鉄からニュートラムに向かって上る1基だけが掲示もアナウンスも何も無いのに東京式、しかも昔からだ。*原因はフェリーターミナル? この奇妙な現象の原因として、SNSではニュートラムの沿線にフェリーターミナルがいくつもあるため、全国各地からの乗客の影響で左に立つようになったなどと説明されている。しかしフェリーが結ぶのは片側空けが広がっていない四国、九州、そして大阪と同じく右に立つ韓国・釜山、中国・上海だし、そもそも4基の...
2023.06.27 10:04東西逆転!東京なのにエスカレーターの右に立つ駅*新型コロナ対策が立ち方を変えた日本橋駅 東京なのに大阪式にエスカレーターの右に立つのは、地下鉄日本橋駅と直結の東京建物日本橋ビルのエスカレーターだ。上り下りのエスカレーターが並んでいるので、東京式に左に立つと、上りと下りの人がずっと近接したままになってしまう。 そこで新型コロナ感染対策としてひらめいたのが大阪式。上り下り共に右に立てばソーシャルディスタンスが保てるという名案だ。*お邪魔看板が効果絶大 そこで「コロナ対策 距離を取ってください!右側にお乗りください」という看板を出したのだが、それだけでは効果は薄い。そこでその看板をわざと突き出るように、しかも2枚も立てた。左に立とうとすればこの看板が邪魔で、必然的に右に立つことになったのだ。 この看板...
2023.06.23 05:49講演「顔の文化人類学」江戸川大学一般市民向け教養講座「オープンカレッジ」でお話ししました。 テーマは「顔の文化人類学」。 自分の顔といっても、運転免許証、パスポートでは、笑顔、怒り顔、泣き顔、そして横顔は自分の顔として認められないなど、特定の角度で、感情を排除した顔が国家によって「正式な顔」と決められてしまいます。 また福沢諭吉といえば1万円札の顔、西郷隆盛といえば上野公園の像など、刻々と変わるはずの人の顔が、特定時点で切り取られ、その人の顔とされてしまいます。そしてそれが大河ドラマなどで再生産されていきます。 果たして自分の顔は本当に自分の顔なのか、アイデンティーとの関係を通して考察してみました。
2023.06.23 05:41イケメンと鬼の文化人類学 (江戸川大学オープンカレッジ講演)イケメンと鬼の文化人類学 良く知られている明治天皇肖像は、実は本人とは似ても似つかない。本人は伝統的日本の貴族顔なのに対して、肖像は白人を思わせるイケメンなのだが、それもそのはずで、明治政府は天皇の肖像をイタリア人画家に描かせ、それを写真に撮り”御真影”として人々に示したのだ。 明治維新は一方では王政復古で、”神聖ニシテ犯スヘカラス”の天皇は当然立派な顔のイケメンでなければならないが、他方では文明開化で、日本の伝統文化を排して欧米文化に倣うべきとしたから、天皇は伝統的日本人顔では具合が悪いというわけだ。 戦後もメディアが白人ぽいソース顔こそ美しいと喧伝したから、白人こそ美しいというものさしは今日に至るまで日本人の頭の...
2023.06.20 19:55『日本経済新聞』にインタビュー記事掲載 「鶏肉の呼び方、なぜ”かしわ”」 東京では「かしわ」といえば千葉県柏市だが、関西など西日本各地では鶏肉のこと。 鶏の色が柏の葉の色に似ているからといわれているのだが、この鶏とは今日主流の白いブロイラーではなく、古くからの黄鶏。 鶏は弥生時代には中国大陸、朝鮮半島から入ったといわれ、古くから飼育されてきた。江戸時代には一部で肉も食べていたのだが、生類憐みの令やら幕末の改革やらで抑圧され、馬肉を「さくら」、猪肉は「牡丹」、鹿肉は「もみじ」、そして鶏肉は「かしわ」と言い換えたという庶民の知恵だ。 ではなぜ今日一部の地方だけがかしわなのか?そのヒントは、かしわと呼ぶのが関西、西日本の他に愛知県、秋田県だという点にある。 つまり中国、朝鮮半島から伝来したこともあり、古くから地鶏として広く飼育し...
2023.06.18 02:47『福島民友新聞』に掲載 今日は父の日。しかし母の日と比べたら格段に存在感が薄い。実はこれ、日本だけではなくかなり世界的。そもそも日程も安易で、日本は例によってアメリカの受け売り、デンマークやロシアは他の記念日に便乗だし、台湾の8月8日は発音が「パパ」だから。オーストリアとなるとそもそも動機が不純?で、繊維不況のさなかにシャツの売り上げ増を狙って設定といった具合。 まさに「母は強し」のそんな状況を描いた拙著『日本人が知らない世界の祝祭日事典』(2022年、淡交社)の「冷遇される父の日」が、『福島民友新聞』で紹介されました。
2023.06.16 06:02美人の文化人類学ー江戸川大学オープンカレッジ講演 どういう人が美人なのかは見れば“本能的”にわかる、などと思いがちです。しかし美人像といっても、太っているほど美人とか、首を意図的に伸ばしたほうが美人など、美人像は民族によって多様です。さらには明治時代の美人が今日ではかならずしも美人には見えないように、同じ民族でも時代によって変わるのですから、本能説はあてになりません。 それどころか、中国では皇帝の好みで変えられたり、軍国主義時代の日本で強い兵隊になる子を産める女性こそ美人と軍部が決めつけた「翼賛美人」といった例に見られるように、政治的力によって美人像は変えられてきました。さらに経済力、軍事力、情報力なども人々の美人像を変える力を持っています。 ですから、情報が氾濫し、ルッキズムが幅を利かす時代を生き...
2023.06.13 03:16江戸川大学教養講座「オープンカレッジ」で「顔の文化人類学」江戸川大学一般市民向け教養講座「オープンカレッジ」でお話ししました。 テーマは「顔の文化人類学」。 自分の顔といっても、運転免許証、パスポートでは、笑顔、怒り顔、泣き顔、そして横顔は自分の顔として認められないなど、特定の角度で、感情を排除した顔が国家によって「正式な顔」と決められてしまいます。 また福沢諭吉といえば1万円札の顔、西郷隆盛といえば上野公園の像など、刻々と変わるはずの人の顔が、特定時点で切り取られ、その人の顔とされてしまいます。そしてそれが大河ドラマなどで再生産されていきます。 果たして自分の顔は本当に自分の顔なのか、アイデンティーとの関係を通して考察してみました。