イケメンと鬼の文化人類学 (江戸川大学オープンカレッジ講演)

イケメンと鬼の文化人類学                  

 良く知られている明治天皇肖像は、実は本人とは似ても似つかない。本人は伝統的日本の貴族顔なのに対して、肖像は白人を思わせるイケメンなのだが、それもそのはずで、明治政府は天皇の肖像をイタリア人画家に描かせ、それを写真に撮り”御真影”として人々に示したのだ。

 明治維新は一方では王政復古で、”神聖ニシテ犯スヘカラス”の天皇は当然立派な顔のイケメンでなければならないが、他方では文明開化で、日本の伝統文化を排して欧米文化に倣うべきとしたから、天皇は伝統的日本人顔では具合が悪いというわけだ。

 戦後もメディアが白人ぽいソース顔こそ美しいと喧伝したから、白人こそ美しいというものさしは今日に至るまで日本人の頭の中に刷り込まれている。

 他方の鬼も、古くは縄文人、さらには土蜘蛛といった権力に逆らった少数民族などに押された烙印で、今日に至るまで醜い鬼の顔のモデルとされている。

 だから自分の頭の中にあるはずの美のものさしも、いつのまにやら操作されうると認識しておくことはいつの時代にも重要というわけなのだ。

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